いちばんになりたい
だから
ひとりのおとこに
めをつけた
そいつと
しのびの
わざをきそって
いちにちもはやく
いちにんまえに なるんだ
そして
いちばんになってやるんだ
たしかにそいつは
ひとあじ
ちがう
たっているところが
おれより
すこしだけ
さきなんだ
ほんとうにすこしだけなんだと
カンチガイした
あまく
みていた
すこしの差なんだ
すぐに並び立つことができるんだ
あっというまに追いつけると そして
追い越せると
信じていた
疑うことは
なかった
けれど
その少しが
とても
大きくて
走っても走っても走っても
追いつく事が出来ない
それどころか 軽く引き離されるしまつだ
立っている距離が
どんどん開いていく
確認出来ないほど
遠くなる
それでも後を追い続けるおれを
誰もが皆 笑う
自分の限界を知れと
皆で笑う
高い目標を掲げろと言う先生までもが
無理はするなと 笑う
横に
並びたい
並んで
一緒に
走りたい
今は遠くても
必ず追いついて
そして
いつの日か
驚く早さで
追い越してみせるからな
抜きつ抜かれつ
切磋琢磨して
互いを高め合うんだ
お前だから
お前のあとだから
追いかけると決めた
待っていろ
必ず追いついて
横へと並び
そして
お前を
追い越してやるからな
なあカカシ
最初に会ったその日から 随分
長い年月を重ねてきたものだ
あっという間の 日々だったような気もする
懐かしく記憶をたどってみたのだ
なにもかもが小さかった
おれが
汗を流し 涙を流した
鍛練の成果もあって
人並み以上に技も扱えるようになったと思うのだ
慕ってくれる
部下もいる
対等につきあえる
仲間も出来た
いわゆる一人前の忍になれたというわけだ
なによりも
お前に
追いつき
そして
並んで走りたいという願いが叶った
気が付いてみると
何度かに一度は追い越す事も出来るようになっていた
悪くない
心境だ
おれに先を越され
表面では なにくわぬ顔をしながら
内心大いに焦るお前の様子を
そっと
うかがう
それもまた
一興と
有頂天になっていると
すぐに
抜き返され
なにくそと発奮する
おれ自身の気持ちも
また
面白いものだな
とにかくお前は
おれの
予想を超えてゆく
どこにそんな力を隠し持っていたのかと
驚かされる
精一杯の力で追い越しても お前は
涼しい顔をして
あっけなく 横をすり抜けていく
やはり間違いはなかったのだ
あの日
目標を
お前に決めて正解だったのだ
嬉しい気持ちで
どこまでも追いかけて
ひたすら走る
いつも視線の先に
お前を追う
それが何故か
心地良いと感じるのだ
背を追わねばならないという
悔しい気持ちと共に
何故だか
清々しいのだ
たぶんおれは
追いかけていたいのだろうと思う
追いかけて追いかけて
どこまでも走り続けていたいのだ きっと
そしていつまでも
お前の ほんの少しだけ後ろを
力の限り
走り続けていたいのだ
技を磨き
心を磨き
離されないように
追いかけ続けていたいのだ
それがおれの望む
おれにとっての一番なのだろう
お前の背中を追いながら
持てる力を振り絞って肩を並べたり
鼻のアタマを先に出したりして お前を挑発し
一瞬先んじても すぐに追い抜かれ
腹を立てながらもまた 追いかける
これからも そんなふうに おれは走っていくだろう
どこまでもひたすらに
走り続けることだろう |
しつこくつきまとう奴がいる
痛いほどの視線を感じる
憧れにも似たような暖かなその中に
敵意むき出しの荒々しい意思を織り混ぜた そんな熱を
常に背中へと浴びせかけてくる
悪意のないことは分かっている
ただ
恐ろしいほどの真剣さで
常に現状に満足することなく
絶えず後ろから あおり続けてくる
鬼気迫る様子で 近付いてくる
かなり遠くに
いるはずだけれど
いつかは
抜かれてしまいそうで
だから考え得る限りの 手段を講じる
確実に足固めをして防壁を強くする
俺が一番でいる事は
誰もが認める事実だけれど
何もせずに
そこにいられるわけじゃない
そのことを
よく分かっているのは
後ろを追いかけてくる
あいつなんだ
俺を煽って
俺を試す
それだけの力しかないのか まだまだやれる筈だろうと
休む暇を
与えてくれない
それが
一番であり続ける者の努めであると
そして
もっと高みを目指せと言いたげに
このへんでいいだろうと思う俺に
留まることを許さない
どこまで昇れば
確実にお前を引き離せるのか
後をついて こないのか
少し振り返って確認しながら
ただただ懸命に 昇ることだけに努める
いつのまにか
遥か後ろにいたはずの
お前が
すぐ 真横にいる事に
驚く
そして
思いもしなかった高いところへと
立っている自分に気付く
昇った力は
俺のものだが
昇らせてくれたのは 追いかけてきたお前の
熱情ともいうべき
執念だ
ガイ
お前に追い越されないように俺は
常に上を
目指し続ける
俺が
たどり着くんだ
誰よりも先に
どこへだって
いつだって
そしてお前は
どこにいても
いつのときも
振り返らずとも すぐ近くにいるのだろう
背後にぴたりと 付き従っているのだろう
それとも誇らしげに
肩を並べるように
隣に立っているのかもしれない
しつこくつきまとう奴がいる
痛いほどの視線を感じる
憧れにも似たような暖かなものもあり
敵意むき出しの荒々しさもあり
その中に
確かな居場所を確保して
ぬくもりにも似た安らぎの色を垣間見せたりもする
そんな熱を常に近くに感じている
しつこくつきまとう奴がいる
隙あらば追い越してやろうとする奴がいる
追い抜かされないように
けれどそんな事は
全く思ってもいない様子を装って
常に上を
目指し続ける
近くにいる
お前の気配を感じながら
許された道を
突き進んでゆく
そうして
俺たちは
誰も行ったことのない
高いところへと
その身を置くのだろう
置いて なお
そのことに満足せずに
また
どこまでも
共に
昇ってゆくのだろう |
(終)
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いやあもう、書いていてドキドキする組み合わせですよ、この二人って。
今更言うまでもないけれど、どっちも、いい男だなあ…。
カカシを追いかけまくっている、まるでストーカーのようなガイです。
でもそれが全然イヤじゃなくて、反対に感謝している感がある、
ちょっと変わったカカシです。( 笑 )
カカシの後を追いかけてきて、これからもずっと追いかけつづけるのか、いつまで?
一生かな。
死ぬまで上を目指さないといけないカカシも、大変だなあ。
( 前年度アップを迫られる、企業の営業担当さんのようだ )
彼らの力は「互角」といっても、全く、ホントに僅差無く
同等の力を持っているというのはありえない訳で
そこには微妙な差があると思うんです。
だから、追い駆けっこみたいに書いてみました。
並んで走っているよりも、
抜きつ抜かれつの方が、より高い所へ行ける感じがします。
現実的にどちらが先んじているかというと
もちろんカカシが先なのは、言うまでもないことで。
( 互角なんだから、どっちが先っていうのはないよ、
とおっしゃる方もいるでしょうが、私は、
゛いつでもどこでも何があってもカカシの力は里一番・カカシ応援隊゛ですから。
ライバルのガイの為にも
カカシは常に、一番でありつづけていて欲しい存在なんです。)
でもでも、どうなんだろう。
もしかして、後を走っているガイは、
追い越せるけれど、
カカシを追っていたいから(←これ今回のポイント)
力を溜めて後を行っているのか、
精一杯走って後なのか、
ソコのところで、ずいぶんと悩みました。
原作を見ると、大概ガイも強いんですね。(当たり前)
もうほとんど、並んでいるかホンの少し追い越しているかの、きわきわ状態。
じゃあ、ガイには余裕があって
わざと、後を行っているのかとも考えましたが
ガイの性格じゃあ、そんなことはありえないな、と。
ホント言うと
力を溜めて後を行く方が、カッコいいんですが、書いてて。
…でも、まあ、一生懸命付いて行くってことで。
それこそ、鬼気(嬉々?)迫る様子で。
最初、文だけ分けて載せるつもりだったのですが
この絵のことを思い出して、真ん中に置いて
詩をニ分割してみたら、
ちょうど、あつらえたように(!古い言い方)しっくりくるので
一緒に載せてみました。
トラコちゃんの描くガイは、とても強気マンマンな顔をしているので
この詩にとても合っていると思います。
トラコちゃん、何度も描きなおしを迫ってゴメンナサイ。
( 2005.1.31 )
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