頭を良くする迷秘訣
木ノ葉の里上忍待機所。午後3時10分。
ソーセージを食べ終えたアスマ。紙で口の周りを拭い。
それをじっ、と見ているガイ。
その視線を振り払うかのように、アスマ。煙草に手をかける。
腕組みするガイ。口をへの字に結ぶ。
ひゅうと風が吹き込んだ。
二人に挟まれたカカシ。耳の上をしきりと掻く。
カーテンが大きく揺れ。
天上まで舞い上がる。大きな、布の波。
ガイは腕組みのまま。口を開く。
「アスマ、子供の食いものだ。ソーセージは」
「言われてる、アスマ」
肩をすくめる、カカシ。
「柔らかいものばかり食べていては」
口を開け、笑う。白い歯が眩しく光るガイ。話を続け。
「歯も丈夫にならんぞ」
アスマはこの場に居たくない。食いもの談義などまっぴらだ。
そんなアスマの心中を察知する筈もなく。
立ち上がる、ガイ。
机に尻を乗せて座り。長くしなやかな足を組む。
「いいか。堅いものをよく噛んで食べると」
おいおい。
アスマはため息を漏らす。お説教かよ、まったく。
カカシはよほど暇なのか、ガイの話に付き合って。
ふんふんと頷く。
「顎をよく動かす事で、脳に刺激が行くのだ」
カカシの頭を人差し指で突つく。
「こんな感じだな」
ガイの連続突きに、流石のカカシも困った風で。
「頭が痛い」
泣き落としのカカシ。
「そうだろう」
得意気な、ガイ。
「日頃の食生活、乱れているお前には頭の痛いセリフだろう!」
組んだ足を元に戻し。
ガイ、先刻机の上に置いた袋に手を入れ。
茶色の中から、一掴み取り出し。
カカシの目前へすっ、と差し出す。手の中に盛られた、物体。
「イワシ?」
小指ほどの長さの魚。干されてカラカラ。
「おう。イリコって言うぞ。食べろ」
ガイは嬉々として、自分の口に持ってゆく。
アスマは付き合いきれず。部屋を出てゆこうとする。
その背に声をかけるガイ。
「脳に刺激を与えると、賢くなるぞアスマ」
日頃、木ノ葉旋風だかでくるくる回って
脳みそグニャグニャの奴に。んなこと言われたかないよ。
フンと笑ってアスマ。
「……お前、堅いもの食ってその程度か」
思わぬアスマの反撃にカカシ、目を丸くする。
「ん?何だ」
10匹ほど口の中に入れ。噛み砕く作業に熱中のガイ。
扉を開け、アスマ振り返り。
「……俺は、いいよ」
効き目の程度は、たかがしれてる。
鼻息荒いアスマ。
「そうか?」
なおも、バリバリとイリコを丸齧りしている、ガイ。
それを見上げながら、カカシ。
茶色の袋の大きさに、溜息。
コレ全部食べちゃうのか?
はああと、溜息。
(終) |