いわゆるひとつの健康法
木ノ葉の里上忍待機所。午前10時。
ハヤテが頭を抱えている。前に置かれた一枚の紙。
文字と数字の羅列。
自慢気にゲンマ。ハヤテの前で、自分の紙をこれ見よがしに振って見せ。
「嫌味なヒトですね、あなた」
鬱陶しげにハヤテ。
「鉄分足りない位だぜ、俺は」
胸を張り笑うゲンマ。
ハヤテの隣でアスマ。ハヤテのものと見比べて。
「お前、白血球も少ないな。…数値、皆低いな」
アスマは変に感心し。
健康診断の結果表。
注意印の者は忍務内容にも制限有りとのお達し。
「ヤバイよ、ハヤテ」
よくコレで生きてるな。驚きを見せるゲンマ。
「このままだと、外回り無しだぜ」
頷くアスマ。
「ずっと事務?」
心細そうにハヤテ。
「そういうアスマは?」
ゲンマに言われ。渋々紙を出すアスマ。
ゲンマ、ひったくるようにして。見た。
「肝臓の数値が微妙だな、お前。脂肪肝一歩手前だぜ」
危険・危険。言われてアスマ。
「検査前日にしこたま飲んだから、そのせいだ」
剥れるアスマ。
遠くから。大きな声が聞こえてくる。
とても陽気。雄々しくはしゃぐ声
「おれなんて、悪いところは一つも無いぞ!」
得意気な、嬉々とした声が響いてくる。
「……ガイだな?」
ゲンマが呟いた途端。扉がさあっと開いて。
「お前ら健康かーっ!」
お決まりのナイスガイポーズで登場の男。
左手は天を指し。右にくねる腰に手を添えて。
「かーっ?!」
部屋を見まわし。上機嫌のご様子。
「凄い気迫だ」
使わなくてもいいところで、無駄にエネルギーを使ってるよ。
呆れるゲンマ。
「数値も吹っ飛ぶ勢いですね…」
その明るさが今は羨しいハヤテ。
「血圧高くねえかお前」
アスマの問いは味気無い。それらを全く気にもせず。
「この体を健康の基準にしろ!お前ら!」
勝ち誇った様な笑いを浮かべ。
「やだやだ。健康オタクと一緒にいたら、調子狂うな」
ガイの後ろ。カカシが呑気に立っている。それに気付き、ガイ。
「お前!貧血に低血圧に低血糖だろ?いかんな!」
「今日のガイにくっついているだけで、写輪眼の具合がどうもダメ」
弱々しく、困ったようすで、カカシ。
「健康体あっての写輪眼だ、カカシ!
おれの様に体の調子が万全ならば、
あのイタチに対抗しうる万華鏡写輪眼取得も夢では無いぞ!」
「…分かって言ってんの?ガイ」
半ば呆れ気味で。溜息をつくカカシ。
そんなカカシに構わずに、ガイ。
「皆に伝授するぞ」
大声で呼ばわる。
一同、すこしの辛抱と、沈黙する。
「健康の秘訣は血液循環を良くする事だ」
無反応にも動じずに。続けて。
「遮るものなど無くしてしまえ!」
カカシは席につく。
読もうと取り出した本をガイに横取りされてしまい。
大げさに、拍手。褒め称え作戦。カカシの反撃。
そうと気付かず、ガイ。気を良くし。
「故に。おれはノーパンを推奨する!うむ!」
一同前へつんのめる。一様に顔を見合わせ。
そんな結論ありかよ?!
ノーパンって!
推奨って事は。こいつ今、まさに!
ノーパン?!
皆は顔を強張らせ。後退したい気分になる。
ガイはますます口調を荒げ。
「細いパンツのゴムすら、血の流れを妨げる。邪魔だ邪魔だ!脱いでしまえ!」
調子に乗り、更に自分ポーズを連発のガイ。
カカシ、わざとらしく両手を挙げ。呑気な声で。
「凄いー!ガイ!それって昼夜関係無くだよね?」
一同目を点にし。
聞いたカカシの勇気を、褒め称えたい気分。
ガイは顔を真っ赤にし。視線に気付き、
急いで股間を手で押さえ。
「ば・ばか、カカシ。昼間は穿いてよいのだ」
「じゃあ、いつ実行するの?」
不思議そうに、小首をかしげた。
「決まっている。夜だ!」
胸をこれ以上無いくらい前へと突き出し。
カカシに向けナイスガイ・ポーズ。
振り返り、その場の一人ひとりに、丁寧にナイスガイ・ポーズ。
ハヤテは大きくむせながら、咳払いが止まらない。
アスマもゲンマも暗く溜息。
"夜の生活にまで、お前なんかに口出しされたくねえよ。"
小さく呟く、ゲンマ。
"お前ひとりで尻出して寝てろ、健康優良児。"
アスマは小声で毒づいた。
(終) |